JALの情報掲載

″自分の問題は、自分で解決する″という強い意志と意欲に、われわれは驚嘆の念を覚えます」と、JR三社の社長が、それぞれ全く同じように言ったという。 また、S氏は、このとき「よきDNA」を感謝の二つ目に掲げた。
「企業遺伝子」とはよくいったものだが、JTBマン自らもよく口にする「JTBらしさ」や「よきDNA」という言葉には、歴史に裏打ちされた会社への熱い想いが秘められている。 このたびの改革でも、反対意見がなかったわけではない。
トップダウンと聞けば、強引な改革と取られがちだが、実際は愛社精神に支えられての断行だった。 「馬を川に連れて行くことはできても、その馬に水を飲ませることはできない」という諺を引用したS氏は、「いかに優れた資質を持ち合わせていても、自発的にならなければ、より高い達成は得られない」ということを社員に説いた。
S氏がいち早く察知した「閉塞感」は、他者が起こしたものでなく、あくまで自らが招いたものだということを、社員の多くは気づかない今、日本では、地に足のついたカミング・バックの機運が、地方発で興っている。 人的交流が地域を越え、ときには国境を越えて活発化する中で、旅行会社のあり方、旅行業のあり方が問われる時代になったのである。
これからが正念場めまぐるしい変化の中で、新生JTBグループは「あらたなる挑戦」というステージを迎えた。 どのような未来像を持って、これからの時代を生き抜こうとしているのか。
どのような英知を集めて乗り切ろうとしているのか。 JTBは、「旅行」という一つのキーワードで集い、旅を「文化」に、そして旅行業を二一世紀のリーディング産業にまで押し上げようとしている。

これまでの実績はあるが、ここからが正念場を迎える。 り、企業の歴史的な産物である。
時間を経なくては育まれないものが含まれている。 そして、疑いもなく先輩から引き継いだものである「よきDNA」を、あとに続く者たちにも伝えていきたいということを、今回のホールディング化を通して多くの社員たちに伝えようとした。
無形の財産を継承することほど、難しいことはないが、その無形財産を、後世に伝える重要な役割を、S氏は一企業人として担い、それを全うしようとしたのである。 JTBの社是から「旅行」の二文字が消えたバーチャル全盛の時代だからこそ「交流する」が求められるインターネットの飛躍的な発達と普及により、バーチャル(仮想)コミュニケーションが加速する一方で、「人と人とのリアル(現実)コミュニケーションが廃れはじめているのではないか」という話をよく耳にする。
全国一○○○カ所もの店舗数を誇り、対面ビジネスを中心に旅行業の首位を独走してきたJTBも、インターネット予約の新興業者に圧されはじめた。 ニ○○三年以降、経営改革を検討する中で、リアルとバーチャルのあり方に大きな関心が集まった。
そうした中で、人と人との現実世界での「交流」を主体とした文化的な産業という位置づけを社内で本格的に検討しはじめた。 そして、○六年春の新経営体制の発足を目前にして、事業ドメインを、「総合旅行産業」から「交流文化産業」へ刷新したのである。

「交流文化産業」という言葉は、JTBが独自に編み出した「造語」で、「内外にわたる人々の交流を通じて、ツーリズム発展の一翼を担い、平和で心豊かな社会の実現に貢献する」というJTBの「経営理念」そのものを指している。 「政治にはじまり、経済、文化、スポーツなど、あらゆるジャンルでグローバルな交流が活発化している時代だからこそ、旅行業をはじめとする観光産業(ツーリズム)も、これら交流の創造や拡大に一層寄与し、社会に大きな貢献を果たそうではないか」。
JTBの企業案内には、このように綴られている。 旅行会社でありながら、社是からあえて「旅行」の二文字を外したのである。
これは、三世紀に羽ばたくJTBの、企業としてのあり方を表していると受け取れる。 「観光という現象は、″グローバル″と、″ローカル″が出会い、せめぎ合う場として展開している」として、観光を「文化」とみなす考えが学術的にも定義されているが、「交流文化産業」という概念は、「カルチュラル」なものと「インダストリアル」なものの出会いの場を指し示している。
二一世紀のキーワードは、「交流する」にあるということなのかもしれない。 企業レピュテーションを活かした近ごろ「コーポレート・レピュテーション」ということが盛んに叫ばれている。
「評判」や「名声」を意味する「レピュテーション」を、企業の重要な資産としてとらえようという、米国を中心に広がった企業価値に対する概念を指す。 そもそも企業には、バランスシートに明細される「土地」や「建物」といった有形資産だけでなく、目に見えない無形の資産もあることを忘れてはならない。
資産の部に記されはしないが、独創的な知識や技術、ノウハウといった「知的資本」や「ブランド」が無形資産の一例で、有形の土地や建物より資産価値が高いこともある。 ここでいう「ブランド」とは、特定のものに対して顧客が抱く「イメージの集積」を指しているから、企業が主体的に培うことはできない。
人気投票で高い企業レピュテーションを得るためには、ブランドそのものの魅力を高める努力はもちろん、企業の社会的責任(CSR)をまっとうし、ステークホルダー(利害関係者)から相応の評価を受けることも重要だ。 ちなみに、JTBは上場企業ではないが、世の中には、JTBのように上場していなくとも優良企業といわれる会社はいくつもある。
株価だけが企業の価値を測るモノサシではない。 どのような貢献を企業として果たせるかも、企業レピュテーションの大きなファクターなのだ。
「ツーリズム産業」という未確立な領域を、日本を代表する一大産業に育てあげようとしているリーディングカンパニーとしての使命を、JTBは今、社会への貢献をもって推し進めようとしている。 「交流文化産業」という言葉は、その旗印なのである。
「交流文化産業」をキーワードにJTBの「交流文化ビジネス」には、大きく分けて三つの戦略がある。 一つは、「ビジネスモデルの変革」だ。
「継続的に利益をあげることができる新たなビジネスモデルを構築しないかぎり、店頭営業が抱える採算性の厳しさは解決しない」。 店頭営業は、JTBにおけるリアルの最たる強みだが、この部分を重視しただけでは、膨大な経費に見合う十分な収益を得ることは難しい時代になっている。

チケットを販売するとき、店頭に立つ社員に少しの気づかい、心がけがあるだけで、収益アップにつなげることができる。 あるファーストフード・ショップがハンバーガーを売る際に、「一緒に、ポテトもいかがですか?」と声をかけるだけで大きな収益を上げたことがあるが、幸い「交流文化ビジネス」三つの戦略「JTBが提唱する″交流文化産業″を、新経営体制のなかで、事業の柱として推し進めていこう」。
企業研究会研究叢書『経営革新推進実践事例集』に寄せられた論文「新たなグループ経営体制の構築〜JTBグループ・シナジー2008」には、交流文化ビジネスの基本戦略が綴られている。

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